Dragon V2 space ship
Image credit: SpaceX
 スペースX社は5月29日、有人の宇宙飛行に使われるドラゴン宇宙船の新バージョン、ドラゴンV2を初公開した。
 スペースX社は2002年に設立された、ロケットや宇宙船の開発・製造を行う企業で、PayPalなどのIT事業で財を成したイーロン・マスク氏によって創設された。小型ロケットのファルコン1や、大型ロケットのファルコン9、その改良型であるファルコン v1.1、そして無人の補給船ドラゴンなど、革新的な宇宙機を矢継ぎ早に送り出してきた。
 現在同社はドラゴン補給船を使い、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を補給するミッションを担っている。これは米航空宇宙局(NASA)との、商業的な契約によって行われているもので、つまりNASAから同社には契約金が支払われている。そして次にNASAは、物資だけでなく宇宙飛行士の輸送も民間企業に担わせる計画を立てており、スペースX社ではこの契約の獲得も狙っている。またNASAはそれと同時に、その宇宙船の開発の支援も行っており、段階ごとに目標を設定し、それをクリアした企業に賞金を与えている。現在スペースX社は、航空宇宙大手のボーイング社と、シエラ・ネヴァダ社としのぎを削っている。
 今回公開されたドラゴンV2は、その宇宙飛行士の輸送に使うための宇宙船だ。ISSなど、地球低軌道に最大で7人の宇宙飛行士を送り込むことができる。
 これまで同社は、有人版のドラゴンについて、ドラゴン補給船に少し手を加えたようなデザインを公表していた。しかし公開されたドラゴンV2は、姿形が大きく変わっていた。
 最大の特長は、宇宙船がパラシュートを使わず、陸上の狙った場所にピンポイントで着陸ができるということにある。それを可能にするのは宇宙船の側面に装備されているスーパードレイコー(SuperDraco)と呼ばれるスラスターで、今流行の3Dプリントによって製造される。
 スーパードレイコーは着陸以外にも、打ち上げ時にロケットに何らかの問題が起きた際にロケットから宇宙船を引き剥がすために使われることになっている。また着陸前にスーパードレイコーに何らかの問題があった場合は、従来のドラゴンのようにパラシュートを使って着陸することも可能だ。
「ヘリコプターのように、地球上のどんな場所でも正確に着陸することができます」
「21世紀の宇宙船は着陸すべきです」
 マスク氏はこのように述べ、パラシュートで地上に着陸するボーイング社のCST-100宇宙船、また滑走路が無ければ着陸できないシエラ・ネヴァダ社のドリーム・チェイサーを牽制した。
 ロケットエンジンによる着陸を行うことによって、燃料を再充填すれば再び宇宙に飛ばすことができる。また耐熱システムは交換式ではあるものの、数回の再使用が可能となっている。
 また操縦席にはタッチパネル式のスクリーンを装備し、スイッチだらけのアポロやスペースシャトルの操縦席とは、見た目も操作方法も洗練されている。こちらも万が一に備え、通常のボタンも装備されている。
 さらに公開されたCG映像では、宇宙船の後部にあるトランクが、ドラゴン補給船から大きな変更が加えられている様子が分かる。トランクは円筒形をしており、その中に非与圧貨物が搭載できるようになっており、ドラゴン補給船ではそのトランクの両側に太陽電池パドルがくっついた形をしているが、ドラゴンV2ではトランクの全体に太陽電池が張り巡らされており、さらに4枚の小さな翼(フィン)が付いている。このフィンの役割は明かされていないが、おそらくロケットから脱出する際に、機体を安定させるためのものだと考えられる。
 またISSへは、スペースシャトルやソユーズのように直接ドッキングが可能で、現在のドラゴンのように、ISSの近くに一旦停泊し、ロボットアームに捕まえてもらい、ISSに結合するという必要はない。
 マスク氏によれば、まず今年後半にも、ドラゴンフライと名付けられた試験機を使い、打ち上げ中断システムの試験が行われる。そして2015年後半には、ドラゴンV2の無人での最初の試験飛行が試みられ、そして2016年にも有人飛行が行われるとのことだ。
 スペースX社が現在、ボーイング社とシエラ・ネヴァダ社と獲得を目指して競っているNASAの契約はCCtCap(Commercial Crew Transportation Capability、商業有人輸送能力)と呼ばれるもので、その勝者は今年8月にも明かされる予定だ。NASAはここで1社以上を選ぶとしているが、財政事情もあり、3社すべてが選ばれることは無い見通しで、おそらくは1社のみになる可能性が高いと予想されている。今年4月の時点では、ボーイング社は20個ある規定の目標のうち17個をクリアしており、スペースX社は17個中の13個、シエラ・ネヴァダ社は13個中の8個となっており、ボーイング社がもっとも優勢だ。
 しかし、もしスペースX社が敗れることになったとしても、開発を歩みが止まることはないだろう。もし同社が、NASAからの資金目当てのみでドラゴンV2を開発しているのだとすれば、すでに従来のドラゴンで信頼性が確立されているパラシュートやトランクなどの技術をそのまま流用するはずであり、逆噴射による着陸や、近未来的なタッチスクリーン式の操縦席など、まったく新しい先進的な技術を導入する必要がないばかりか、NASAからの信頼という点では欠点にもなりうるからだ。
 同社がそうしたリスクを犯してまでドラゴンV2を開発しているということは、彼らにとってドラゴンV2は、あくまで真の目標への通過点に過ぎず、そしてその真の目標とは、NASAからの契約獲得などではなく、彼らが度々語っている火星への移住など、人類の宇宙進出だからであろう。
■SpaceX | Webcast
http://www.spacex.com/webcast/

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