暗黒物質の正体解明を目指すAMSの初期観測結果

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Image credit: NASA
 欧州合同原子核研究機関(CERN)は4月3日、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているアルファ磁気スペクトロメータ(AMS)による観測と分析の途中経過を初めて発表した。
 AMSは宇宙線、すなわち宇宙の彼方から飛来する高エネルギーの原子核や素粒子を検出してその性質や飛来した方向を調べる装置であり、暗黒物質(ダークマター)の正体に迫る観測結果が得られることが期待されている。
 暗黒物質はその名の通り正体不明の物質で、重力で周囲に与える影響は観測できても暗黒物質そのものを直接観測する手段は今のところ存在しない。先月、欧州宇宙機関の天文衛星プランクの観測結果から明らかにされたところによれば、宇宙の成分の26.8%は暗黒物質である。
 2011年5月19日にISSに設置された直後から2012年12月10日までの間に、AMSは250億回も宇宙線を検出している。このうち約680万件が電子あるいは陽電子と判定された。陽電子は電子の反物質であり、電子が負の電荷を持っているのに対して正の電荷を持っている。分析の結果、陽電子の総数は40万個に達した。宇宙由来の反物質がこれほど大量に観測されたのは初めてのことだ。
 超対称性(supersymmetry)理論という仮説によれば、2つの暗黒物質が衝突すると対消滅して陽電子を生み出すことがある。我々の周りに暗黒物質が均等に分布しているとすれば、陽電子はあらゆる方向から均一に飛来すると予想される。AMSの観測結果はこれに一致した。しかし、銀河系内に散在するパルサーが放出した陽電子である可能性も否定できない。なお、超対称性理論の予想では、発生する陽電子が持つエネルギーには一定の制限が存在するはずだが、これについては今のところ確認できていないという。
 1995年にAMSを提案して以来設計開発や運用を指揮してきたマサチューセッツ工科大学のサミュエル・ティン教授(ノーベル物理学賞受賞者)は「これらの結果は今までにない精度で宇宙線の陽電子を測定したものであり、AMS検出器の威力と性能をはっきりと示しています」と手応えを語った。
 AMSはISSの運用が続く限り観測を続ける。
■AMS experiment measures antimatter excess in space
http://press.web.cern.ch/press-releases/2013/04/ams-experiment-measures-antimatter-excess-space

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