ゼニートの失敗はエンジンの推力偏向装置の故障によるものか

Photo of RD-171M
Image credit: NPO Energomash
 今月1日に起きたゼニート3SLロケットの打ち上げ失敗について、シー・ローンチ社が組織した事故調査委員会は現時点で判明している事項をまとめた文書を発表した。
 それによれば、まず打ち上げに向けた準備に問題はなく、また離昇する瞬間までロケットのすべてのシステムが正常に動いていたものの、離昇からおよそ11.4秒後に、挙動がロール角の制限を超えたことを飛行制御システムが検知、そして離昇20秒後に飛行中断システムがロケットエンジンを停止させ、離昇56秒後に墜落したという。ロールとはロケットの前後を軸とする回転のことで、つまりその回転の度合いが想定を超えてしまったため、飛行を中断させるべくロケット自身がエンジンを停止させたということだ。
 より厳密には、飛行中断システムがエンジン停止の命令を出したのは離昇から16秒後であったものの、発射台を保護するために離昇から20秒間は機能しないようにプログラムが組んであるため、その4秒間はエンジンは動き続けていたようだ。なお、旧ソ連製のロケットは欧米のロケットのように自爆するようには造られていないので、エンジンを停止させた時点で飛行中断システムは十分に仕事を果たしたということになる。
 なぜロール制限を超えたのかについては、第1段ロケットエンジンのRD-171Mの推力偏向制御システムが疑われており、また、正式に原因と認められたわけではないが、BIMと呼ばれる油圧ポンプが原因ではないかとする説をインターファクス紙などが報じている。RD-171Mはエンジン自体を振らすことで噴射の方向を制御しているが、それを動かすアクチュエーターに油圧を供給するのがBIMだ。ロケットから得られたデータによれば、ポンプを動かすタービンの回転数が、離昇前には正常だったものの、その直後に低下し、そして止まってしまったことが示唆されているという。BIMが動かないと、RD-171Mは首を振ることができないため、その結果ロケットは姿勢を制御できなくなったのではないか、ということだ。
 BIMはロケットの離昇10秒前に起動し、高圧のヘリウムガスによってタービンを回転させるが、エンジン点火1.5秒後にロケットの燃料にも使われているケロシンを用いた駆動に切り替えられる。この切り替えのタイミングで何か起きたと考えられよう。ヘリウムガスを用いたタービンの駆動は打ち上げ前でも可能だが、ケロシンは実際にエンジンが動き出さないと供給されないので、何か問題を抱えていたとしても打ち上げるときまで表面化することはない。
 またRD-171Mはロシアのエネルゴマシュ社が製造しているが、BIMはウクライナ製で、そしてそれらはゼニートを製造するウクライナのユージュマシュ社で組み込まれる。このような複雑な製造過程を経ていることも問題の遠因と言えよう。
■Missions : Failure Review Oversight Board
http://sea-launch.com/missions-q11349-Failure_Review_Oversight_Board.aspx

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