月探査機グレイル、月を穿つ

Flight of GRAIL
Image credit: NASA/Caltech-JPL/MIT
 アメリカ航空宇宙局(NASA)は17日、月探査機グレイルを月面に落下させ、約1年間に渡る探査を終了した。
 グレイルはエブとフローと名付けられた2機からなる探査機で、月の重力場の詳細な地図を作成する事を目的としていた。2011年9月10日に打ち上げられ、今年1月に月軌道に到着、軌道を整えた後、3月1日から科学観測を開始した。
 2012年5月29日に当初予定していた科学観測をすべて終えたものの、探査機に余力があった事から、8月30日から延長ミッションが開始、そしてこれも12月1日にすべて完了した。
 12月13日、NASAはグレイルを月面に制御落下させると発表した。スラスターなどが吹かせなくなった探査機は、いつか自然に落下するが、その際に月面基地や重要な探査地点などに損害を与えてしまう危険がある。そこで制御ができるうちに無害な場所に落下させておこうというものだ。
 またグレイルはただ落ちていくだけではなく、機体に残っていた推進剤量を量る実験も行われた。打ち上げられて以降、探査機内にどれぐらい推進剤が残っているかはおおよそしか分からない。そこでタンクが空になるまで噴射を行う事で、残っていた推進剤の量を正確に割り出す事で、今までの消費量の予想が合っていたかを知る事ができ、また将来の探査機の消費量予想の精度向上にもなる。
 12月17日、太平洋標準時14時28分51秒にエブが月面に激突、その後を追うように12時29分21秒にはフローが激突、グレイルはミッションを終えた。落下地点は月の北極地域、ゴルトシュミット・クレーターの近くにある標高2500mの山であった。
 グレイルが落下した地点は、今年7月に逝去したサリー・ライド氏にちなみ、「サリー・K・ライド衝突地」(Sally K. Ride Impact Site)と名付けられた。サリー・ライド氏はアメリカ初の女性宇宙飛行士としてスペースシャトル・チャレンジャー(STS-7)で飛行を行い、また宇宙教育にも尽力し、グレイルに搭載されたムーン・カムという教育用装置にも携わっていた。ライド氏の名前は、人類の科学史においても、そして月の地形としても残る事となる。
 グレイルのミッションは終わったが、人類の月探査はまだまだ終わる事は無い。NASAは来年1月にラディ(LADEE: Lunar Atmosphere and Dust Environment Explorer)という月探査機を打ち上げる。これは月を取り巻く希薄な大気とダストの調査を行う探査機だ。また中国も2013年に月ローバーの「嫦娥三号」を打ち上げ、2014年以降にはロシア、インドもそれぞれ月探査機を打ち上げる予定であり、さらに2015年ごろには民間企業アストロボティック・テクノロジー社が、月周回機と月着陸機を打ち上げる事を計画している。
写真=NASA
■NASA’s GRAIL Lunar Impact Site Named for Astronaut Sally Ride – NASA Jet Propulsion Laboratory
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2012-401

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