NASAは9月6日、古代の火星を研究する上で重要な知見をもたらしたTimothy Livengood氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、8月1日付でIcarusに掲載されています。

火星の古代(右)と現在(左)の環境を描いた想像図

■かつて存在した大気の厚さを酸素の同位体比から調べたい

現在の火星の大気圧は地球の1パーセント未満しかありませんが、水がある環境で生成される鉱物の存在や、水によって侵食を受けたとみられる地形が残されていることなどから、初期の火星では今よりもずっと厚い大気によって地表の温度が一定の範囲に保たれており、そこには液体の水が存在していたと考えられています。

しかし、「どれほど地球に似ていたのか、似ていた期間はどれくらい続いたのか」という問いかけに対する最適な推測はまだなされていない、とLivengood氏は語ります。古代の火星の環境には、未解明の部分が多く残されているのです。

現在は希薄になっている古代の火星の大気の量も解明されていない謎のひとつですが、その量を推定する方法として、酸素の同位体(※)の比率を足がかりにするものがあります。

(※…同じ元素のなかでも原子核にある中性子の数が異なるもの)

自然界の酸素の大半は「酸素16(16O)」が占めるいっぽう、中性子の数が多い同位体の「酸素18(18O)」もごくわずかに存在しています。火星のような環境では軽いほうの酸素16が先に失われていき、重いほうの酸素18の濃度が年月とともに濃くなっていきます。

そのため、現在の火星における酸素16と酸素18の比率(同位体比)を調べ、酸素16が失われるペースなどの情報と組み合わせることで、かつて火星に存在していた大気の量を推定できる、というわけです。

■火星の酸素同位体比は一日の時間帯によって変化していた

ところが、火星における酸素の同位体比は研究によってその値に開きがあり、古代の大気量を推定する上で無視できない矛盾を抱えていました。

そこでLivengood氏らの研究チームは、矛盾が生じる理由を探るために、ハワイのマウナケア山にあるNASA赤外線望遠鏡施設(IRTF)を使って火星の大気を観測しました。

その結果、二酸化炭素(CO2)の一部として火星の大気中に存在する酸素の同位体比は、時間帯によって異なることが判明しました。酸素18の濃度は火星の正午ごろが最も低く、地表が暖まる午後1時半頃には最も高いレベルにまで蓄積されていたのです。

今回の研究によって、酸素18の濃度が時間帯によって変化することが、過去の研究で異なる同位体比が導き出される一因になっていたことがわかりました。この研究結果は古代の火星環境をただちに推測するものではありませんが、同位体比の矛盾が解消されたことで、古代の火星環境をより正確に再現する糸口になることが期待されています。

 

Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/mars-lost-atmosphere
文/松村武宏

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