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スペインのバルセロナで8月18日から23日にかけて開催されたゴールドシュミット国際会議において、系外惑星の海洋環境における生命存在の可能性を検討したアメリカ・シカゴ大学のStephanie Olson氏らによる研究成果が発表されました。CNNなどが8月23日付で報じています。

地球(右端)とハビタブルゾーンにある系外惑星の想像図

■NASA開発のソフトウェアで海洋環境をシミュレート

「ケプラー」「TESS」といった系外惑星の検出に特化した宇宙望遠鏡の活躍もあって、近年では数千個の太陽系外惑星が見つかっています。なかでも注目を集めているのは、主星(恒星)からの距離がほどよく、生命の存在が期待できる「ハビタブルゾーン」に位置する地球クラスの系外惑星です。

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ハビタブルゾーンにある系外惑星に大気があれば、地表では水が液体で存在する可能性が高まり、地球のようにが広がっているかもしれません。そこでOlson氏ら研究チームは、NASAが開発した「ROCKE-3D」というソフトウェアを利用し、いろいろな環境のパターンを持つ惑星を仮定して海洋の循環や気候をシミュレートしました。

特に注目されたのは、海の深層から表層へと湧き上がる「湧昇流」です。地球の海における湧昇流は、海底に蓄積された栄養素を表層へと運び上げる役割を果たしています。研究チームは、湧昇流が多く生じる環境ほど生命にとって住みよい環境であると考え、最も効率良く湧昇流が働く惑星の環境パターンを推測しました。

その結果、「大気の密度が高く、自転速度が遅く、大陸が存在する惑星」において、湧昇流の効率が高まることがわかったといいます。Olson氏は、最良の環境を持つ系外惑星は「地球よりも活発な生命活動を支えられる」としています。つまり、地球の海は生命にとって必ずしも最良の環境ではなく、もっと住みやすい海を持つ系外惑星さえ存在するかもしれないというのです。

■系外惑星の海に関する研究が将来の観測に向けたヒントに

M型の恒星を公転する系外惑星のなかには、ハビタブルゾーンにありながらも主星の潮汐力によって自転と公転の周期が同期(潮汐固定、潮汐ロック)しているものが幾つも見つかっています。これらの系外惑星の自転周期は地球より長い場合が多く、片側がいつも昼、もう片側が夜という極端な環境にあると想像されてきました。

しかし今回の研究では、自転速度が遅い系外惑星でも十分に濃い大気や海洋がもたらす循環によって生命の住みやすい環境が維持され得るだけでなく、地球より生命豊かな海さえ存在する可能性が示されました。今はまだ系外惑星の海に存在する生命の兆候を捉えることができなくても、生命の存在が期待できる系外惑星のモデルが示されることで、将来の観測機器や観測手法を編みだす上でのヒントとなることが期待されます。

ジョージア工科大学のChris Reinhard氏(今回の研究には不参加)がCNNに寄せたコメントで「重要で刺激的な一歩」と述べているように、今後は海洋環境も視野に入れた系外惑星探査が進められていくことになるかもしれません。

ROCKE-3Dによる表面温度のシミュレート結果の例。系外惑星「プロクシマ・ケンタウリb」に地球のような1気圧の大気があり、自転と公転が一致している場合を想定。常に片側が昼の環境だが、気流によって夜側にも熱が移動する様子が示されている(Credit: NASA/GISS)

 

Image Credit: NASA/Ames/JPL-Caltech
https://edition.cnn.com/2019/08/23/world/exoplanets-diverse-life-scn-trnd/index.html
http://www.astronomy.com/news/2019/08/life-on-alien-worlds-could-be-more-diverse-than-on-earth
文/松村武宏

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