太陽系の歴史が書き換わる? 天体衝突が頻発した時期を巡る新説が登場

コロラド大学ボルダー校は8月12日、誕生したばかりの地球や月などへ数多くの天体が衝突したとする太陽系初期の「後期重爆撃期」に見直しを迫るStephen Mojzsis氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、同日付でThe Astrophysical Journalに掲載されています。

地球に天体が衝突した瞬間の想像図

■「後期重爆撃期」はいつだったのか

1969年から70年代にかけて実施されたアポロ計画の有人月面探査では、6回の着陸で合計380kgほどのサンプルが集められ、地球に運ばれました。これらサンプルの年代を測定したところ、その多くが月自身の年齢よりも数億年若い、およそ39億年前に形成されたらしいことが判明しています。

どうして月の地表にある物質は、月自身よりも若いのか。その謎を説明するために、「今から40億年前頃、月に数多くの天体が衝突したことで表面の物質が溶融した」とする説が登場しました。この時期は「後期重爆撃期(Late Heavy Bombardment)」と呼ばれています。

しかし、後期重爆撃期には問題もありました。大量の天体が衝突したのは月だけではなく、当時の地球や火星といった他の惑星でも天体衝突が相次いだはずです。風化作用が乏しい水星や火星には、その頃のクレーターが残されていてもおかしくありません。

ところが、水星や火星だけでなく月のクレーターをつぶさに調べてみても、天体衝突が急増した証拠は見つからなかったのです。また地球では、およそ44億年前に形成された「ジルコン」という鉱物が見つかっており、その頃には惑星の表面全体が融けてしまうほどの天体衝突はすでに治まっていたのではないかとする指摘もありました。

■隕石の年代とシミュレーションから天体衝突の時期を推定

今回、研究チームは地球に落下した隕石のデータベースを利用して、隕石を構成する物質の形成年代を調べました。

研究に参加した東京工業大学地球生命研究所のRamon Brasser氏によると、惑星の表面は天体衝突だけでなく火山活動など惑星自身による活動でも年代が更新されてしまいますが、小惑星では天体衝突による年代の更新だけが残されるといいます。

つまり、小惑星を形成する岩石の形成年代を調べれば、後期重爆撃期のように太陽系規模で天体衝突が相次いだ時期を求めることができるというわけです。調査の結果、およそ45億年前より後の時代には、そのような時期がなかったことが明らかになりました。

また、研究チームは初期の太陽系における惑星の移動についてもシミュレーションで検討を行いました。

木星から海王星までの4つの惑星は、現在とは異なる軌道を描いて誕生し、今の位置まで時間をかけて移動していったと考えられています。シミュレーションの結果、4つの惑星の移動は44億8000万年前より前に始まったはずで、太陽系が誕生してから1億年以内に進行した出来事だろうと推定されました。

これらの結果や過去の研究などから、惑星の移動を引き金に天体衝突が誘発されたとみられるものの、その時期は従来考えられていた40億年前頃よりも数億年遡ると結論付けられました。地球の場合、およそ44億年前には生命が誕生できるほどじゅうぶんに落ち着いていたとみられることから、生命の歴史を巡る議論にも影響を及ぼす可能性があります。

■なぜ年代にずれがあったのか

前述のように、後期重爆撃期が40億年前頃にあったとする説は、月の表面で集められたサンプルの多くが39億年前に形成されたと判明したことから提唱されました。

しかし、月ではおよそ39億年前に「雨の海」を形成した大規模な天体衝突がありました。アポロ計画での着陸地点はいずれも月の表側に集中しており、集められたサンプルも雨の海を作った天体衝突に由来する可能性が以前から指摘されていました。

天体衝突によって形成された月の「雨の海」(Credit: NASA)

今回の研究も、アポロ計画で集められたサンプルは39億年前の衝突の影響を受けているとする説を支持しています。今後予定されている月の南極への有人月面探査などによって、より離れた地域のサンプルが採集されれば、アポロ計画で集められたサンプルの年代が偏っていたのかどうかが明らかになるでしょう。

 

Image Credit: NASA with modifications by Stephen Mojzsis

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文/松村武宏

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