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ハワイ大学天文学研究所は7月1日、2017年に発見された恒星間天体「’Oumuamua(オウムアムア)」は自然物として説明できるとする国際研究チームの研究結果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、同日付で公開されています。

オウムアムアの想像図と実際の観測画像(左下)

今から2年近く前の2017年10月19日、ハワイ大学のハレアカラ天文台にあるパンスターズ計画の天体望遠鏡「Pan-STARRS1」によってオウムアムアは発見されました。その後の観測によって、オウムアムアは太陽系外から飛来し、再び恒星間空間へと飛び去っていく軌道を描いていることが判明しています。

史上初めて観測された恒星間天体であることや、太陽系の天体にはあまり見られない細長い形状をしているらしいこと、太陽に最接近したあとのオウムアムアが天体の間で作用する重力だけでは説明ができない速度の変化を示していたことなどから「地球外の知的生命体が建造した宇宙船や探査機ではないか?」とする説が現れるなど、大きな話題となりました。

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今回論文にまとめられた研究では、数週間という限られた期間内に実施されたオウムアムアの観測結果をもとにして、オウムアムアが自然に形成されたものなのか、そうではないのかを検討しています。

その結果は……。研究に参加したハワイ大学天文学研究所のRobert Jedicke氏「恒星間からやってきたというユニークな特徴こそあるものの、その他の性質は太陽系内の天体と一致している」と語るように、知的生命体が作った宇宙船だとする証拠は見つからず、オウムアムアの特徴は自然に作られた天体として説明できるようです。

たとえば、オウムアムアの表面は赤い色をしていることが観測で判明しましたが、太陽系外縁天体「ウルティマ・トゥーレ」のように、太陽系にも赤っぽい色をした天体は存在しています。

じゃがいもや雪だるまなどにたとえられる形をしたウルティマ・トゥーレ

また、重力だけでは説明できない速度の変化については、太陽系の彗星のようにガスや塵を放出したことが原因であると推測されています。オウムアムアからはそのような物質の放出は観測されませんでしたが、速度の変化がごくわずかであったことから、観測できないほどのわずかなガスや塵の放出でも説明することが可能とされています。

自然の天体が恒星の重力を脱出できるのかという点についても検討されています。研究では、木星のような巨大惑星によって形成されたオールトの雲では恒星の重力がわずかしか作用しないため、長周期彗星として恒星の近くに戻ってくるものもあれば、反対に飛び出してしまうものもあり得るとしています。

ただ、人類が観測した恒星間天体は、これまでのところオウムアムアただ1つきりです。恒星間天体をより正しく理解するためには、さらに多くの恒星間天体を発見・観測しなければなりません。

研究チームが期待を寄せているのは、2022年の運用開始に向けて南米チリで建設が進められている口径8.4mの「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope:LSST)」。この新しい天体望遠鏡によって、年間1つのペースで恒星間天体が見つかると予想されています。

ハワイ語で「’ou」は「手を差し伸べる」、「mua」は「1番目」や「先立つ」を意味します。人類がその知見を初めて手にすることとなったオウムアムアに続く第2、第3の恒星間天体は、LSSTが見つけるのか、それとももっと早い段階で見つかるのでしょうか。

 

Image Credit: ESA/Hubble, NASA, ESO/M. Kornmesser, Gemini Observatory/AURA/NSF
http://www.ifa.hawaii.edu/info/press-releases/oumuamua_natural/
文/松村武宏

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