欧州宇宙機関(ESA)は7月16日、宇宙望遠鏡「ガイア」が観測した多数の恒星の位置情報をもとに天の川銀河の中心構造を捉えることに成功したとする、バルセロナ大学のFriedrich Anders氏らによる研究成果を発表しました。

天の川銀河の想像図に再解析された「ガイア」の観測データを重ね合わせたもの

恒星が集まった渦巻腕と呼ばれる構造を持つ銀河を「渦巻銀河」と呼びますが、天の川銀河はそのなかでも「棒渦巻銀河」に分類されます。中心部分に棒状の構造を持つことから棒渦巻銀河と呼ばれるのですが、天の川銀河の外に出ることは今の人類にはできないため、実際にどのような構造をしているのか直接見ることはできません

今回、Anders氏はAnna Queiroz氏とともに開発したプログラムを使い、ガイア宇宙望遠鏡による観測データを解析しました。ガイアは天体の位置や運動について調べるアストロメトリ(位置天文学)に特化した宇宙望遠鏡で、2018年にはガイアが観測した17億にも及ぶ天体の位置情報を元にした、高精細な銀河系の全天画像が公開されています。

ガイアの観測データから作成された全天画像(Credit: ESA/Gaia/DPAC)

ガイアのデータと他の手段で観測された可視光線や赤外線のデータをあわせて解析した結果、およそ1億5000万個の恒星までの距離をより正確に割り出すことが可能となり、天の川銀河の中心部分で棒状に分布する恒星の様子を立体的に描き出すことに成功したのです。

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こちらは、今回その位置が調べられた1億5000万個の恒星の分布を示した画像。黄色オレンジの部分ほど星の密度が高いことを意味します(ESAの公式YouTubeアカウントで公開されている動画より)。太陽系は放射状に広がって見える分布の中心部分、ひときわ密度が高いところに位置します。

中央の斜めに見える棒状構造が天の川銀河の中心部分(YouTubeに公開されている動画より)

太陽系に近いほど観測しやすいので位置が判明している恒星の数も膨大ですが、画像の中央には恒星が棒のようにまとまっている部分があり、太陽系から同じくらい離れた他の領域よりも明らかに密度が高くなっている様子が見て取れます。これこそが、天の川銀河の中心に存在する棒状の構造を示しているのです。

ガイアは現在も観測を続けていて、2021年にはより多くの天体に対する観測結果が公開されることになっています。銀河の正確な構造を把握できるようになることで、外から観測できない天の川銀河がどのように形成され進化してきたのか、その歴史を明かす糸口になることが期待されています。

 

Image Credit: ESA/Gaia/DPAC, A. Khalatyan(AIP) & StarHorse team(データ)/NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech)(天の川銀河のマップ)
http://sci.esa.int/gaia/61459-gaia-starts-mapping-our-galaxy-s-bar/
文/松村武宏

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