京都大学は7月16日、同大学の山敷庸亮氏をはじめとした国際研究チームによって、太陽型の恒星で発生するスーパーフレアや波長の短い極紫外線が惑星にどのような影響を与えるのか、その評価を定量化することに世界で初めて成功したと発表しました。

スーパーフレアにさらされる太陽系外惑星の想像図

近年続々と発見されている太陽系外惑星のなかには、主星(惑星が公転している恒星)からの距離が適度で、生命に適したハビタブルゾーンに位置するものがいくつも見つかっています。

系外惑星の探査でよく使われる「トランジット」(惑星が恒星の手前を横切る現象)を利用した観測方法の特性上、ハビタブルゾーンに存在するとされる系外惑星の多くは、質量の小さなM型の恒星に見つかってきました。そのなかには地球からおよそ4.2光年しか離れていない恒星「プロキシマ・ケンタウリ」を11.2日ほどで公転する「プロキシマ・ケンタウリb」も含まれています。

ところが、M型の恒星は太陽(G型の恒星)に比べて活発で、生命に致命的な影響を与えかねないスーパーフレアがたびたび発生すると見られているため、「ハビタブルゾーンにある」とされる系外惑星でも、生命に適した環境が維持できないのではないかとする説もありました。

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今回の研究では、系外惑星で想定される大気組成の絞り込み(「窒素と酸素」「二酸化炭素」「水素」の代表的な3パターン)、恒星から飛来するコロナ質量放出(フレアとともに多量のプラズマが放出される現象)のシミュレーション予想されるフレアのエネルギーを発生頻度別に定量化する作業などを行い、ハビタブルゾーンにあるとされる系外惑星や太陽系の惑星に対するフレアの影響を詳細に解析しました。

その結果、フレアが到達したときの地表における想定被ばく量は、1気圧の大気が存在していればほとんどの環境で最大数シーベルトに留まることから、地球タイプの生命体にとって致命的なレベルにはならないことがわかりました。さらに、系外惑星が地球のように2つの極を備えた磁場を持っている場合、被ばく量がより減少することも判明しています。

しかし、X線の波長に近い極紫外線の影響を検討してみると、M型の恒星におけるハビタブルゾーンは恒星に近すぎるため、そこにある系外惑星の大気は地球の70倍前後の勢いで失われてしまうこともわかりました。たとえハビタブルゾーンを公転していたとしても、紫外線によって大気が失われれば地表面での被ばく量が増え、生命にとって過酷な環境になってしまうのです。

また、主星にそれだけ近いところを公転していると、地球に対する月のように系外惑星の片面だけが主星に向き続ける「潮汐固定(潮汐ロック)」の状態に入る可能性が高まります。結果として系外惑星は十分な磁場を生み出せず、やはりフレアを防ぎきれない環境になってしまうだろうと指摘されています。

地球の希少性を再認識する結果とも言えますが、恒星のスーパーフレアを原因としたコロナ質量放出が実際に観測された例はまだありません。今後は系外惑星の大気組成調査やオーロラの観測などを通して、シミュレーションの精度をさらに高めていくことが期待されています。

 

Image Credit: Haruka Inagaki, Nami Kimura, Fuka Takagi and Yosuke A.Yamashiki
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/190716_1.html
https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190716-kyoto.html
文/松村武宏

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