国立天文台は6月26日、所属する塚越崇氏らの研究チームによる南米チリの「アルマ望遠鏡」を使った観測によって、「うみへび座TW星」今まさに惑星が誕生しつつある現場を高い解像度で捉えることに成功したと発表しました。

うみへび座TW星は誕生からまだ1000万年程度しか経っていないと考えられている若い恒星で、地球から194光年と比較的近いところにあります。その周りにはガスや塵が集まった「原始惑星系円盤」が広がっているのですが、地球からはこの円盤を垂直に見ることができて観測に適しているため、研究がよく進んでいる天体でもあります。

今回、塚越氏らのチームは、アルマ望遠鏡によるこれまでの観測より3倍も高い感度でうみへび座TW星の原始惑星系円盤を観測しました。その結果、中心にあるうみへび座TW星から52天文単位(1天文単位の由来は太陽から地球までの平均距離)離れたところに、今まで見つかっていなかった小さな電波源を観測することに初めて成功したのです。

うみへび座TW星の原始惑星系円盤(背景)と、今回見つかった小さな電波源の拡大図(右上)

この電波源の正体については、2つのパターンが予想されています。

1つは、生まれたばかりの惑星に取り込まれつつあるガスや塵が形作った「周惑星円盤」という構造が正体であるとするもの。この場合、過去の観測結果から総合的に判断すると、電波源の中心には海王星程度の大きさの惑星が隠されていることになります。

ただ、周惑星円盤は真円に近い形状になると予想されていますが、今回見つかった電波源は公転軌道に沿ってやや引き延ばされた楕円形(長さは4天文単位、幅は1天文単位ほど)をしています。また、電波の強度も周惑星円盤にしては強すぎると判断されています。

もう1つは、原始惑星系円盤のなかに生じたガスの渦にかき集められた塵の集合体が正体であるとするもの。原始惑星系円盤では地球の気象現象における低気圧や高気圧のようなガスの渦が生じるとされており、そこに集まった塵が合体を繰り返すことで惑星へと成長していきます。

こうした塵の集まりは楕円形に引き延ばされると予想されているため、形状は観測結果と一致します。しかし、そうした規模の小さな集まりが1つしか観測されないというのも不自然なため、ガスの渦に集められた塵であると言い切るのも難しいようです。

問題の電波源をクローズアップ。右上から左下にかけて長い楕円形をしていることがわかります

その正体は惑星のタマゴなのか、それとも赤ちゃんなのか。どちらであるにしても、今まさに惑星が形成されつつある現場をピンポイントで捉えることに成功した事実は揺らぎませんが、議論に決着をつけるべく、アルマ望遠鏡や国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」を使ったさらなる観測が予定されています。

 

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tsukagoshi et al.
[https://alma-telescope.jp/news/press/twhya-201906] 文/松村武宏