彗星観測ミッション「コメット・インターセプター」のコンセプトアート

欧州宇宙機関(ESA)は6月19日、現在検討中の彗星観測ミッション「Comet Interceptor(コメット・インターセプター)」の概要を公表しました。日本語で「彗星迎撃機」を意味するコメット・インターセプターは、これまでにないスタイルのミッションとなっています。

従来の彗星観測ミッションは、すでに見つかっている彗星に対して計画が立てられてきました。たとえば、約76年の周期で太陽を公転している「ハレー」彗星の場合、1986年の最接近に合わせて各国から数多くの探査機が打ち上げられました。ESAの彗星探査機「ロゼッタ」が接近観測を行った「チュリュモフ・ゲラシメンコ」彗星も、6.5年の周期で太陽を公転していることが知られています。

こうした200年未満の周期で公転する短周期彗星は探査計画が立てやすいものの、度重なる太陽への接近によって水などの揮発しやすい物質はその一部が失われたり、表面が風化してしまったりしています。

いっぽう、公転周期が200年を超える長周期彗星では、原始的な特徴を留めている可能性が高いと期待されます。太陽系が誕生した頃の名残りを観測するのにより適していますが、公転周期が1000年10万年に達するものもある長周期彗星の場合、「次の接近」を待つには時間がかかりすぎることが問題となります。

また、近年では2017年に太陽へ最接近した恒星間天体「オウムアムア」のように、一度きりで太陽系を去ってしまう希少な天体も見つかっています。公転周期が非常に長い長周期彗星や、一度しか接近しない恒星間天体を観測するには、従来のように「見つかってから準備をする」やり方では間に合わないのです。

そこで考案されたのが、探査機をあらかじめ打ち上げて宇宙空間に待機させておき、初めて太陽に接近すると思われる彗星が見つかったら観測に向かわせるという「待ち伏せ型」のコンセプト。つまりコメット・インターセプターは、対象の彗星がまだ見つかる前に打ち上げられて、観測の指示が来るのをじっと待ち続けるのです。

現在の予定では、2028年にESAが打ち上げる系外惑星探査用の宇宙望遠鏡「ARIEL」に相乗りする形でコメット・インターセプターは打ち上げられます。その後、太陽と地球の重力が釣り合うラグランジュ点のひとつ「L2」に移動し、彗星が発見されるまで待機します。

やがて観測に適した彗星が見つかると、コメット・インターセプターはL2を離れて彗星に接近する軌道へと入ります。探査機は3つの機体から構成されており、接近する前に分離することで、彗星を立体的に観測することが可能となります。

ミッションを提案したチームのウェブサイト(http://www.cometinterceptor.space)では、探査機を構成する3機のうち1つを担当する機関として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名が挙げられています。また、日本惑星科学会の資料によると、コメット・インターセプターのミッションに提供する超小型探査機には、小惑星探査機「はやぶさ2」月周回衛星「かぐや」といった、過去の探査機に採用された機器をカスタマイズして搭載する予定とされています。

以下の画像は、コメット・インターセプターのTwitterアカウントが2019年3月20日にツイートしたもの。画像右上の「Spacecraft B1」に日の丸が添えられているのがわかります。

一期一会のチャンスを逃さず観測しようとする意欲的なミッション。実現すれば、今から9年後に探査機が地球を飛び立つ予定です。

Image credit: ESA
http://sci.esa.int/cosmic-vision/61416-esa-s-new-mission-to-intercept-a-comet/
文/松村武宏