やはり宇宙は加速している。より正確なハッブル定数の数値が判明

こちらの画像は、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された輝線星雲「LHA 120-N11」(単に「N11」とも)の姿。N11は地球から16万2,000光年先の「大マゼラン雲」に存在します。

今からおよそ138億年前のビッグバンによって始まったとされるこの宇宙は、現在も膨張を続けていると見られており、膨張する速度は「ハッブル定数」という値で示されます。名前の由来は、遠方の天体が地球から遠ざかっていることを見出したアメリカ合衆国の天文学者エドウィン・ハッブル。ハッブル宇宙望遠鏡もまた、彼にちなんで命名されました。

今回、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使ってハッブル定数の再計算を行いました。チームを率いるのは、宇宙の膨張速度が加速していることを発見した功績によって2011年にノーベル物理学賞を受賞したAdam Riess氏です。

今回の計算を行うために、大マゼラン雲のなかにある70個の「ケフェイド変光星」がハッブル宇宙望遠鏡によって観測されました。ケフェイド変光星は明るさが周期的に変化する恒星で、絶対等級(恒星本来の明るさ)が明るいほど恒星の明るさが変化する周期も長い、という特徴があります。

そのため、変光周期から求めた絶対等級と地球から見た実視等級(恒星の見かけの明るさ)を比較すれば、地球からの距離を導き出すことができます。ケフェイド変光星のなかには別の銀河にあっても明るさの変化を識別できるものがあるため、銀河間の距離を測定する際にもケフェイド変光星は利用されます。

今回の観測による再計算で、ハッブル定数は74.03km/s/Mpcと算出されました。これは「1メガパーセク(=326万光年)あたり毎秒74.03kmずつ膨張している」ことを意味します。1光年あたりに換算すれば毎秒およそ22mmとごくわずかですが、宇宙は膨張しているのです。

ところが、他の観測によって求められたハッブル定数は、今回の数値とは異なります。欧州宇宙機関が2013年まで運用していた天文衛星「プランク」の観測データをもとに計算されたハッブル定数は、67.4km/s/Mpcでした。

プランクの任務は初期の宇宙の名残である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB:Cosmic Microwave Background)」を観測することでした。先に触れた約138億年という宇宙の年齢も、プランクの観測データをもとに算出されたものです。つまり、宇宙の初期の時代と現在に近い時代を比較すると、膨張速度がおよそ9パーセント速まっていることになるわけです。

膨張速度が加速していること自体はすでにRiess氏らによって発見されていましたが、その原因を探るためには、過去と現在における膨張速度の差をなるべく正確に求める必要があります。「ハッブル定数の謎に挑むことは、今後数十年の間で最も興奮する取り組みかもしれません」と語るRiess氏は、定数と同じ天文学者の名を冠したハッブル宇宙望遠鏡による観測を、今後も継続していくとしています。

 

Image credit: NASA, ESA. Acknowledgement: Josh Lake

Latest Hubble Measurements Suggest Disparity in Hubble Constant Calculations is not a Fluke
Hubble’s measurements of today’s expansion rate do not match the rate that was expected based on how the Universe appeared shortly after the Big Bang over 13 billion years ago. Using new data from the NASA/ESA Hubble Space Telescope, astronomers have significantly lowered the possibility that this discrepancy is a fluke.

文/松村武宏

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