こちらの画像は、理化学研究所のイーチェン・チャン研究員を中心とした国際共同研究グループアルマ望遠鏡を使って観測した連星系「IRAS 07299-1651」と、その周囲に広がるガス雲の様子です。

IRAS 07299-1651は「とも座」の方向、5,500光年離れたところにある若い連星(2つの恒星が互いに公転し合う天体)です。画像の右側に拡大表示されているのが、ガス雲を通して観測されたIRAS 07299-1651の姿。連星系を包み隠すように広がるガス雲のサイズは大規模で、1万天文単位ほどの広がり(1天文単位は太陽と地球の間隔をもとにした距離の単位)を持っています。

連星は青と赤に着色されていますが、これは恒星の色を表しているのではなく、ドップラー効果を反映しているから。青く着色された恒星(連星系の主星)は地球に向かって近付くように動き、反対に赤く着色された恒星(伴星)は地球から遠ざかるように動いていることを示しています。ガス雲についても同様で、青は地球に近づくように見えるガス、赤は遠ざかるように見えるガスの分布を示しています。

連星系やガス雲の動きに迫った今回の観測によって、IRAS 07299-1651を構成する主星と伴星を合わせた質量が太陽の9倍から18倍に達することや、100天文単位ほどの距離を隔てた連星の公転周期が600年以下であること、それぞれの恒星を取り囲むように直径10天文単位(木星の公転軌道とほぼ同じくらいの大きさ)程度のガス円盤が存在することなどが判明しました。

また、大規模に広がるガス雲から、公転する連星系、恒星を取り囲むガス円盤に至る全体の動きを幅広いスケールに渡って分析することで、IRAS 07299-1651ではサイズの大きな主星が先に誕生し、主星の周囲にあるガス円盤から小さいほうの伴星が誕生したことで連星系が形作られた可能性が高いこともわかりました。

太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星は、そのほぼ全てがIRAS 07299-1651のように連星系を成していることがわかっていますが、連星系が形成される過程については明らかになっていませんでした。今回の研究結果は、分厚いガスを透視して恒星の1つ1つを細かく見分けられるほどに高い解像度を誇る、アルマ望遠鏡ならではの成果と言えます。

ただ、主星のガス円盤と連星系の公転軌道面にはズレがあることから、「主星のガス円盤が分裂して伴星が誕生した」という単純なシナリオでは説明できない可能性も残されています。大質量連星系誕生の謎を解き明かすには、他の大質量連星系に対しても今回と同様な高解像度の観測を実施することが欠かせないでしょう。

 

Image credit: 理化学研究所、ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Zhang et al.
http://www.riken.jp/pr/press/2019/20190328_1/
文/松村武宏

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