土星の衛星「タイタン」は、地球以外で唯一、地表に安定した状態で液体(メタン)が存在することが知られている天体です。今回、タイタンの各地に見られる地形の特徴を記録した地質図が完成し、NASAのジェット推進研究所(JPL)から公開されました。

土星探査機「カッシーニ」による赤外線観測データから作成されたタイタン表面の様子(Credit: NASA/JPL-Caltech/Stéphane Le Mouélic, University of Nantes, Virginia Pasek, University of Arizona)

■タイタンの地形は緯度ごとに明確な特徴があった

タイタンの地質図。砂丘(Dunes、紫)は赤道付近、湖(Lakes、青)は極域にみられるが、そのあいだの中緯度地域には広大な平原(Plains、緑)が広がっている。クレーター(Crater、赤)は少ない(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)

タイタンには窒素を主体とした濃い大気が存在しており、地表の気圧はおよそ1.5気圧とされています。地球ではが大気と地表を循環していますが、タイタンでは炭化水素の一種であるメタンがその役割を担っており、となって降り注いだり、集まってを形成したりしています。

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今回、JPLのRosaly Lopes氏らは、2017年に運用を終えた土星探査機「カッシーニ」によって取得されたレーダーおよび赤外線による観測データをもとに、タイタン全体の地質図(地表の特徴を記録した地図)を作成しました。

公開された地質図を見ると、低緯度の赤道付近には砂丘地帯(Dunes)が多く見られますが、液体のメタンやエタンをたたえた湖(Lakes)高緯度の極域を特徴する地形であることがわかります。極域では湿度が高いために湖が形成されやすく、乾燥した赤道の近くでは砂丘が発達しやすいようです。

いっぽう、赤道と極域にはさまれた中緯度地域には砂丘や湖はあまり見られず、際立った特徴のない平原(Plains)が広がっています。このように、緯度によって地形の特徴が変化するタイタンの様子も、地質図を見れば一目瞭然です。

■メタンの雨が降るタイタンではクレーターが残りにくい

メンルヴァ(Menrva、知られているものではタイタン最大のクレーター)をはじめとしたクレーターも幾つか確認できますが、風雨にさらされるタイタンでは浸食作用を受けることから、現在のタイタンの地表にはあまり残されていないこともわかります。また、地質図のほぼ中央には、カッシーニによって運ばれた着陸機「ホイヘンス」が降り立った場所(Huygens Landing Site)もマークされています。

なお、NASAは今年の6月に新たな探査ミッションとして、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のドローン「ドラゴンフライ」を選定しました。ドラゴンフライはタイタンの空を飛んで移動し、各地でサンプルを採取することが計画されています。

地球のような地形を持ち、有機物に富んだ世界が広がるタイタン。予定通りなら2034年には、その空を1機のドローンが飛行することになります。今回作成された地質図は、ドラゴンフライのミッションにも役立てられることでしょう。

タイタンに着陸した「ドラゴンフライ」の想像図(Credit: Johns Hopkins APL)

 

Image: NASA/JPL-Caltech/ASU
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7542
文/松村武宏

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