有給休暇を使い切って“草”宇宙開発に挑むリーマンサットプロジェクト、初の超小型人工衛星打ち上げへ

左からリーマンサットプロジェクトのファウンダー大谷和敬さん、「RSP-00」開発モデルを手にするプロジェクトマネージャの嶋村圭史さん、「RSP-01」試作モデルを手にする代表理事の宮本卓さん。

 

社会人・学生有志がゼロから作り上げた人工衛星が軌道に乗る。2018年9月1日、一般社団法人リーマンサットスペーシズは、9月11日にHTV(こうのとり)7号機に搭載され国際宇宙ステーションへ送られる超小型衛星「RSP-00」の概要を発表した。

リーマンサットスペーシズの「リーマン」は「サラリーマン」のこと。文字通り社会人を始めとする有志が2014年に結成した宇宙開発団体だ。学生を含め現在は350名ほどのメンバーが参加しており、初期の目標として、超小型衛星を開発、打ち上げ、運用する「リーマンサットプロジェクト」を運営している。

初の衛星となる「RSP-00」は1U(10×10×10センチメートル)サイズのキューブサットだ。太陽電池の発電量など衛星の健康状態を示す“ハウスキーピング”データの受信や、アマチュア無線帯での高速通信など、ミッション期間中に衛星を健全に運用する実証を行う。イベントなどで集めた一般からのメッセージを「宇宙ポスト」という形で送信する、地球の撮像などのミッションも予定している。

RSP-00は専用の梱包材に収められたかたちでHTV7号機に搭載され、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」から衛星放出機構を通じて軌道上に放出される。放出時期は未定だが2018年中になるとみられ、ミッション期間は100~250日ほどになるとされる。

「開発期間中に有給休暇を使い切った年も」という嶋村さん。

 

衛星の開発費は、開発試験費用と「きぼう」からの放出費用も合わせて総額で580万円ほどになる。うち300万円はクラウドファンディングで集め、その他は趣旨に賛同する個人からの寄付でまかなわれた。開発費は実費分のみで、メンバーが自発的に活動した人件費を計算すると総額で5000万円を超えるという。

RSP-00の開発は本格的に始まったのは2015年。メンバーには溶接の工場を持つ金属加工技術者やソフトウェアエンジニア、回路設計が可能な技術者なども参加しているが、衛星開発は始めての試みだ。プロジェクトマネージャを務めた理事の嶋村圭史さんは、学生向けの宇宙教育プログラム「衛星設計コンテスト」の20年以上にわたる過去の資料を読み込み、開発の方針を立てたという。衛星の開発には、宇宙の環境を模擬して試験を行うための“真空チャンバー”が不可欠だが、これを自作して代表理事である宮本卓さんの工場に設置した。放射線の試験には日本のキューブサット開発の先駆けである東京工業大学の放射線試験設備を使用し、振動試験は外部の設備を利用するためメンバーが有給休暇を使って分担し担当した。多くの大学衛星研究者とつながりをつくり、ゼロからおよそ3年半で今回の衛星打ち上げにこぎつけたのだ。

現在の課題は運用の体制づくりだ。最大9ヶ月ほどのミッション期間中に、衛星は1日11回程度、日本の上空を通過して通信が可能になる。宮本さんの工場の屋上には地上局が設置されているが、社会人や学生のメンバーは平日中の運用参加は難しい。メンバーの時間をやりくりし、限られたミッション期間中に最大の成果を上げる体制を検討中だ。

金属加工エンジニアの宮本さん。経営する工場に真空チャンバーや衛星運用の地上局を設置した。

 

今後は、後継機で2019年中の打ち上げを目指す「RSP-01」の開発にも挑む。JAXAの革新的衛星技術実証プログラムに応募し、採択されれば2020年打ち上げのイプシロンロケットへの衛星搭載が可能になる。RSP-01は1Uキューブサットの本体からアームでカメラを伸展させ、地球を背景に衛星の「自撮り」を行うミッションを予定している。アームの伸展と収納を繰り返すことで衛星のバランスを変え、1Uサイズの小さな衛星で姿勢を制御するという機能の実証することも目指している。

シンプルな形状の「RSP-00」。ISS「きぼう」からの放出後に本体に巻きつけられたアンテナを展開し、通信を開始する。

 

アーム伸展式カメラを持つ「RSP-01」の試作モデル。伸展→収納を繰り返して動作するかが技術のカギだ。

 

将来はRSPシリーズ開発で得た技術や知見を活かし、スピンオフして事業化することも検討しているという。衛星にとどまらず月面走行ローバーやロケット開発なども将来構想としてあるといい、民間から宇宙技術者を排出する集団へと成長することが目標としている。

Image Credit:秋山文野

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