ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社は9月2日、軍用通信衛星「MUOS-4」を搭載した、アトラスVロケットの打ち上げに成功した。

ロケットは、米東部夏時間2015年9月2日6時18分(日本時間2015年9月2日19時18分)、米フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションの第41発射台から離昇した。

ロケットは順調に飛行し、約2時間54分後に衛星を分離した。今後、衛星は自身のエンジンを使って、運用を行う静止軌道まで移動する。

MUOS-4(ミューオス・フォー)は米海軍が運用する通信衛星で、航空機や艦艇、地上車両や兵士など移動体向けの通信に使用される。

かつて、この種のシステムは「UHFフォロー・オン」(UHF Follow-On)、通称UFOと呼ばれる衛星が担っていたが、MUOSはそれを代替する新しいシステムとして、2012年から構築が進められている。

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1号機は2012年2月24日に打ち上げられ、今回で4機目となる。全部で5機が打ち上げられる予定となっている。

衛星の製造はロッキード・マーティン社が担当した。打ち上げ時の質量は6740kg。設計寿命は15年が予定されている。

アトラスVロケットは、ロッキード・マーティン社によって開発されたロケットで、ボーイング社のデルタIVロケットと共に、ロッキード・マーティン社とボーイング社の共同出資で設立されたULA社によって運用されている。

これまでに56機目が打ち上げられ、2007年に一度予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は安定した成功を続けており、今回で46機連続の成ともなった。

今回の打ち上げに使われたのはアトラスV 551と呼ばれる構成で、これはフェアリングの直径が5m、固体ロケットブースターを5基装備し、セントール上段にRL10エンジンが1基、ということを示している。

アトラスVの第1段には、ロシアのNPOエネルゴマシュ社が製造した「RD-180」エンジンが使われている。このエンジンを巡っては米国の国内、またロシア側からも、その使用や輸出に関して揉めている状況が続いている。現時点で、RD-180のロシアからの輸出は継続されており、差し迫った状況にはないものの、現在米国では国産の代替エンジンの開発が始まっており、それを装備する新型の「ヴァルカン」ロケットの開発も並行して進められている。

アトラスVの第2段「セントール」には、「RL10C-1」と呼ばれるエンジンが使用されている。RL10は米国で50年以上使われて続けているロケット・エンジンのシリーズで、これまで数多くの人工衛星や惑星探査機などを打ち上げ続けてきた傑作エンジンである。推進剤には液体水素と液体酸素が用いられ、複数回点火できる能力を持ち、衛星をさまざまな軌道に、かつ正確に送り込むことが可能となっている。

従来、アトラスV向けのセントールには「RL10A」が使用されていたが、2014年12月12日の打ち上げから、RL10C-1の使用も始まった。RL10C-1は、デルタIVロケット向けに生産されたものの在庫が余ってしまっているRL10Bエンジンを、アトラスVで使用できるように改造したもので、たとえば炭素繊維強化炭素複合材料を使ったノズルや、燃焼室やインジェクターなどはRL10Bを流用。一方、ターボ・ポンプはRL10Aのものが用いられており、またRL10AにあってRL10Bにはない、点火システムの冗長化や、推進剤の混合比率を制御するための電子機器の搭載といった改造も施されている。

RL10Cはいわば、RL1AとRL10Bを混ぜ合わせたようなエンジンで、さらに軌道上で運用できる時間も、従来の720秒から2000秒まで、3倍弱ほどにまで向上している。

なお、アトラスVには、第2段にエンジンを2基装備する構成(xx2)があるが、RL10C-1はノズルの直径が大きいため、並べて搭載することができない。したがってxx2構成のアトラスVは、今後もRL10Aを使い続けることになる。

また、RL10C-1をさらにデルタIVロケット向けに改造したRL10C-2も開発中で、数年のうちにデビューする予定となっている。

 

■Atlas V MUOS-4 Launch – United Launch Alliance
http://www.ulalaunch.com/ula-successfully-launches-muos4.aspx

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