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中華人民共和国(中国)は2015年9月12日、「通信技術試験衛星一号」を搭載した「長征三号乙」ロケットを打ち上げた。中国は新しい通信技術の試験を目的とした衛星と発表しているが、不明な部分も多く、その正体は謎に包まれている。

ロケットは中国標準時2015年9月12日23時42分(日本時間2015年9月13日0時42分)、西昌衛星発射センターから離昇した。その後、中国航天科技集団公司(CASC)や中国国営メディアなどは、打ち上げが成功したこと、また搭載されていた衛星が、「通信技術試験衛星一号」と名付けられた、通信衛星の試験機であることを発表している。

米軍が運用する宇宙監視ネットワークは、軌道上に2つの新しい物体が打ち上げられたことを検知している。それによると、ひとつは近地点高度201km、遠地点高度3万5825km、軌道傾斜角27.07度の軌道に、もうひとつは近地点高度182km、遠地点高度3万4889km、軌道傾斜角27.05度の軌道に乗っている。おそらく前者が衛星で、後者がロケットの第3段であると思われる。この軌道は、衛星衛星が静止軌道に入る前の、静止トランスファー軌道として妥当なものであり、打ち上げが成功したということは間違いないと考えられる。

CASCなどによると、通信技術試験衛星一号はKaバンドを使った衛星通信技術の試験を行うことを目的としているという。ただ、その詳細は明らかにされていない。

仮に、純粋な技術試験衛星であるなら、打ち上げ前から多くの情報が公開されるはずであり、不自然なまでに秘匿されていることから、実は軍事衛星ではないか、という見方もある。また、軍事用の通信衛星という説の他、ミサイル発射などを検知するための早期警戒衛星であるという説も出ている。

打ち上げ時の質量なども不明だが、5500kgよりは下である可能性が高い。公開された写真から、打ち上げに使われたロケットは「長征三号乙/G2」と呼ばれる型であると見られる。また、関係者がリークしたものと思われる管制室のスクリーンを写した写真から、このロケットが3段式であり、「遠征一号」上段を搭載していないことが判明している。

そして、長征三号乙/G2の静止トランスファー軌道への打ち上げ能力は、最大で5500kgであることが、2012年に中国運載火箭技術研究院が発表した論文から明らかになっている。したがって、通信技術試験衛星一号の打ち上げ時質量は、それ以下ということになる。

●Kaバンドとは

Kaバンドは、これまで主流となっていた周波数帯と比べて周波数が高いため、より大容量のデータを送ることができる。しかしその反面、大気や雨によって大きく減衰されるという短所をもつため、その対策などに新しい技術開発が必要となる。

Kaバンドの通信衛星の構想は1970年代ごろからあったが、技術開発に多額の費用が必要なことや、また需要(必要性)の問題、さらに各社がもつ周波数利権などの事情が絡み合い、欧州や米国、日本からいくつかの試験衛星が打ち上げられただけで、実運用はなかなか行われなかった。

しかし、2004年に打ち上げられたテレサット・カナダ社の「アニクF2」が、世界初のKaバンドを使った商業通信サーヴィスを始めたのを皮切りに、エコースター社、ユーテルサット社、SES社、インマルサット社など、大手の衛星通信会社各社も続々と、Kaバンドの中継器を搭載した衛星の打ち上げを進め、ブロードバンド通信サーヴィスを展開している。

また、新興のO3bネットワークス社は、Kaバンドの衛星を複数打ち上げ、発展途上国など情報技術(IT)のインフラ整備が未熟な地域に対して、先進国との格差を埋めるための衛星通信サーヴィスを始めている。

●長征三号乙ロケット

打ち上げに使われた長征三号乙ロケットは、長征二号をもとに、液体酸素/液体水素を使用する第3段を追加し、静止衛星の打ち上げに対応したロケットである。初期型の「長征三号」は1984年1月29日に初飛行し、2000年6月25日までに13機が打ち上げられた後、引退した。

1994年には第3段を改良し、打ち上げ能力や軌道投入精度を高めた「長征三号甲」が登場し、1994年2月8日に初飛行し、現役である。

また1996年には、長征三号甲の第1段に4基の液体ロケット・ブースターを装備し、打ち上げ能力をさらに高めた「長征三号乙」が登場した。しかし、1996年2月15日に行われた1号機の打ち上げは失敗し、発射場近くの村に墜落、宇宙開発史上最悪とも呼ばれる大惨事を引き起こした。その後は衛星を失うほどの大きな失敗は起こしておらず、海外の通信衛星や月探査機「嫦娥二号」の打ち上げにも使われている。

その後2007年に、第1段とブースターの全長を飛ばし、打ち上げ能力を高めた増強型が開発された。かつては単に「長征三号乙/増強型」と呼ばれていたが、最近になって、直径4.0mの「4000F」フェアリングを装備した「長征三号乙/G2」、直径4.2mの「4200F」フェアリングを装備した「長征三号乙/G3」、G3の第3段に追加のスラスターと燃料タンクをもつ「長征三号乙/G3Z」、そしてG3に「遠征一号」上段を追加した「長征三号乙/遠征一号」といった種類が存在することがわかっている。

さらに2008年には、長征三号甲と乙の打ち上げ能力の間を埋めるために長征三号丙が開発された。甲は静止トランスファー軌道に約2.5トン、乙は約5.0トン強の打ち上げ能力をもつが、長征三号丙は3.7トンと、まさに中間の性能をもつ。見た目も長征三号乙の4基あるブースターを2基にするという、実にわかりやすい変化をしている。2008年4月25日に初飛行し、現役である。

これら長征三号シリーズは通算で77機が打ち上げられており、そのうちロケットと衛星が失われるほどの完全な失敗は1回、軌道には乗ったものの、予定より低かったなどの失敗は4回である。

■【我国通信技术试验系列卫星首星入轨】9月… 来自中国航天科技集团 – 微博
http://weibo.com/5386897742/CAj7HwXsZ?from=page_1001065386897742_profile&wvr=6&mod=weibotime&type=comment#_rnd1442118587161

Image Credit: CASC

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