0901rd-181

米国の「アンタレス」ロケットに装着される、ロシア製の新しいロケット・エンジン「RD-181」が、今年7月にロシアから米国に輸送された。米航空宇宙局(NASA)が8月12日に発表した。

アンタレスはオービタルATK社(旧オービタル・サイエンシズ社)のロケットで、2014年10月に5号機が打ち上げに失敗。その原因が第1段ロケット・エンジンにあった可能性が高かったことから、現在同社は、ロケット・エンジンを新しくするなどの改良を施した、新しいアンタレスの開発を行っている。

この改良型では、失敗の原因と目された第1段エンジン「AJ-26」の使用を止め、新たに「RD-181」というエンジンを装備する。AJ-26はソヴィエト連邦で今から40年ほど前に製造されたエンジンを、現代のロシアと米国で改修したものだが、RD-181は現在も製造が続いているロシア製エンジンである。また、開発や製造を担当している企業も異なる。

ロシアから出荷された最初の2基のRD-181は、今年7月中旬にヴァージニア州ウォロップス島にあるアンタレス組立施設に到着し、ロケットへと組み込まれた。

エンジンの装着数は2基で変わらないが、エンジンそのものの形や、1基あたりのエンジンの性能が上がっているため、ロケットとエンジンとの結合部分などを中心に、改修が施されている。

ロケットに組み込まれた状態でのエンジンの燃焼試験は、今年末から来年初めごろに行われる予定となっている。また、最初の打ち上げは、2016年中に実施される予定だという。

なお、初期の飛行で使われる機体は、第1段タンクが従来型とほぼ同じため、RD-181が本来もつ性能を落とした状態で飛ばすことになっている。この場合、打ち上げ能力は従来型とほぼ同じになる(これを「アンタレス200」とも呼ぶ)。

ただ、現在新しい第1段の開発が進んでおり、これを使った場合はエンジンの能力を最大まで発揮できるため、打ち上げ能力は従来型より最大20%も向上するという(この改良型を「アンタレス300」とも呼ぶ)。

オービタルATK社のフライト・システムズ・グループ長のスコット・レアーさんは「RD-181はこれまでのエンジン以上の推力と比推力を出せるため、アンタレスの打ち上げ能力を増大させることができます。このひじょうに優れたエンジンは、RD-191というエンジンを改造したもので、RD-191は2013年に資格証明プログラムを完了しており、これまでに累計3万7000秒間にもわたる運用実績があります」と述べた。

これまで使われていたAJ-26は、今からおよそ40年前に、ソヴィエト連邦が開発、製造したエンジン「NK-33」が基になっている。NK-33はその後、倉庫で保管され続けた末、1990年代に米国が購入。そしてエアロジェット・ロケットダイン社の手で、アンタレスに装着するための細かい改修が施され、新たにAJ-26という名前が与えられた。

いっぽうのRD-181は、こちらも原型となるエンジンが開発されたのは1980年代のことだが、その後現在まで改良が重ねられており、また製造も続々と行われている、実は新しいエンジンである。

その原型エンジン「RD-170」は、超大型ロケット「エネールギヤ」の第1段用として開発された。世界でも最高の性能をもつエンジンのひとつである。

RD-170は4つの燃焼室とノズルをもっており、4基のエンジンを束ねたようにも見えるが、エンジンに推進剤を送り込むためのターボ・ポンプは1基のみであるため、これでひとつのエンジンとして数えられる。

エネールギヤそのものは、ソ連崩壊などの影響で2回しか打ち上げられなかったが、RD-170の技術は他のロケットに転用され、また改良が重ねられるなどして生き続けた。たとえば、現在も打ち上げられている「ゼニート」ロケットの第1段にはRD-170を改良した「RD-171」や「RD-171M」が、また燃焼室を2つにした「RD-180」は、米国の「アトラスV」ロケットの第1段エンジンとして使われている。

また、燃焼室を1つにした「RD-191」はロシアの新型ロケット「アンガラ」の第1段に、さらにそれを改良した「RD-193」は、将来的にソユーズ・ロケットに使用される予定となっている。改良型アンタレスに装備されるRD-181は、このRD-193の輸出版である。

なお、オービタルATK社は、2014年10月の失敗が起こるより前から、新しいエンジンの使用を検討していた。AJ-26(NK-33)の在庫が限られていることや、再生産の見込みがまだ立っていないためである。当時からすでにRD-181は候補に入っており、2017年ごろから新エンジンを搭載したアンタレスが使われる予定となっていた。

しかし、打ち上げ失敗が起きたこと、また原因がAJ-26にあった可能性が高いと見られたことから、予定が早められたという経緯がある。

なお、失敗の原因について、本当にAJ-26にあったかどうかは不明瞭である。オービタルATK社は、AJ-26が原因であった可能性が高いと発表しているが、しかしAJ-26を供給したエアロジェット・ロケットダイン社は、推進剤タンクの中に乾燥剤が残ったままになっており、それがエンジンに入り込み、爆発に至った(つまりオービタルATK社側の責任)とする見解を出すなど、食い違っており、統一した結論は出ていない。

写真=NASA。

■Two RD-181 Engines | NASA
http://www.nasa.gov/image-feature/two-rd-181-engines

Image Credit: NASA

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