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 ニューシェパード4回目の試験飛行のブースター着陸 ©Blue Origin
スペースフロンティアファンデーションが毎年7月にシリコンバレーで開催してきたNewSpaceカンファレンス、今年はNewSpace企業やその投資の急激な成長が注目されているシアトルで開催され、800人近くが参加した。地元企業のブルーオリジンがサブオービタル機ニューシェパードの4回目のテスト飛行に成功した直後の開催、ブルーオリジンは今回のスポンサーでもあった。宇宙経済の言葉が飛び交う3日間だった。

シアトルは3大メガエンジェルの宇宙の拠点

シアトルは、NASAエイムズリサーチセンターがあるシリコンバレーのようにNASAのフィールドセンターこそはないが、ここは、ポール・アレン(マイクロソフト)、ジェフ・ベゾス(アマゾン)、イーロン・マスク(スペースX)と3大メガエンジェルの宇宙事業の拠点となっている。宇宙旅行で2回も国際宇宙ステーションに滞在したもとマイクロソフトのチャールズ・シモニもシアトル在住、小惑星資源利用のプラネタリリソーシス設立時の投資者である。

シアトルの宇宙産業は、これらメガエンジェルの投資に始まったわけではなく、1916年にボーイングがシアトルに設立されたことが航空宇宙産業の成長のキーとなっている。現在、ワシントン州の航空宇宙の売り上げは年間約80Bドル、航空宇宙関連企業約1400社、もとボーイングの社員も含め人材が豊富で、宇宙エコシステムもすでにできていたという土壌があった。代表宇宙企業に、ボーイング、ブルーオリジン、プラネタリリソーシス、バルカン、エアロジェット、テザーズアンリミテッド、スペースフライトインダストリ、スペースXなどがある。OldSpaceことトラディショナルスペースとNewSpaceの両方に宇宙イノベーションが起きているシアトル、ボーイングの遺産に留まることなく、資本、人材、投資、革新を受け入れる文化がそろった宇宙拠点となっている。

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ストラトロンチのパートナーはどこ?

ポール・アレンの投資会社バルカンエアロスペースは、2011年にストラトロンチシステムズを設立して空中発射型衛星打ち上げシステムのストラトロンチを開発している。ポール・アレンはアンサリXプライズでNewSpaceムーブメントの到来を確信、スペースシップ1に投資した。ストラトロンチ開発ではモハベに300人以上を雇用、スペースシップ1の10倍以上になる250Mドル以上を投入して、ボーイング747のエンジンを6基搭載した双胴機、翼幅117mの世界最大級の母船を開発、76%の組み立て状況である。現在、空中発射される中型ペイロードを搭載するロケットを提供する企業を選定中、過去にスペースX、オービタルATKと契約を取りやめた経緯がある。

リモートセンシングや通信などの衛星ビジネスは売り上げや投資を拡大し、今後もスマートシティ、IoTなどへのアプリケーションで無限の可能性を秘めている。スペースフライトインダストリやブラックスカイなどの宇宙企業にも投資しているポール・アレンは、将来の宇宙経済の姿を見据えている。

 

国際宇宙ステーションにおけるNewSpace

小型衛星によるコンステレーションとともに国際宇宙ステーション(ISS)におけるNewSpaceによる革新的事業も注目されている。ISSは現在、唯一の宇宙の拠点。ナノラックス、メイドインスペース、テザーズアンリミテッド、ビゲロウエアロスペースなど、多くの企業がISSにおける宇宙環境利用、リモートセンシング、小型衛星の放出、宇宙製造、そして深宇宙探査に向けた取り組みを行っている。

ナノラックスは2009年に設立、2010年には最初のペイロードを打ち上げて商業宇宙実験サービスを開始、6年間に350以上のペイロードを打ち上げている。約50か国がISSを活用している中、ナノラックスが打ち上げた国際ペイロードの数も多い。メイドインスペースは2010年に設立、2014年に宇宙3Dプリンターを打ち上げて宇宙製造を開始、2016年に改良型3Dプリンターを打ち上げてISSで商業活動を開始した。さらにNASAとの契約によりアーキノートを開発、将来は3Dプリンティング宇宙ロボットで大型宇宙構造物を建設する。1994年に設立されたテザーズアンリミテッドはシアトルにある古株のNewSpace企業。宇宙3Dプリンターとプラスチックのリサイクルができるデバイスなど数々のユニークな技術開発を行っている。

地球周回軌道の市場は2020~2030年におよそ37Bドルともみられており、2024年のISS運用終了にともない、ISSトランジションや運用終了後の提案も出てきている。商業宇宙ステーションの建設を目指しているビゲロウエアロスペースはISS拡張モジュールBEAMをISSに接続、2年間にわたる実験を開始した。2020年にはBA330を打ち上げて商業運用することでULAとのパートナーシップを締結している。NewSpace2016で突然発表があった宇宙ステーションスタートアップのアクシオンスペースは今年もとNASAのISSマネージャーが起業、2020年を目指して宇宙旅行や研究を行う商業宇宙ステーションを建設する。

NewSpaceカンファレンス最終日のガラ・パーティーは、私にとって1年間の区切りの時間。スペースフロンティアファンデーションに所属してNewSpaceな日々を送るようになってずいぶん経った。NewSpaceを取り巻くランドスケープはめまぐるしく変わっている。

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