「きぼう」から3カ国の超小型衛星放出 今後は48Uキューブサットへ対応を拡大

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「きぼう」から放出されるコスタリカ、ケニアの超小型衛星
 
2018年5月11日、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」より、ケニア、コスタリカ、トルコ3カ国の超小型衛星の軌道上への放出が行われた。衛星放出は3機とも成功し、JAXAは今後「きぼう」から放出できる超小型衛星を最大48U のサイズまで拡大するなど、能力・数ともに利用拡大を目指す方向だ。
 
11日夜、JAXA 筑波宇宙センターでは、きぼう管制室の見学席で3カ国の大使らが山川宏JAXA理事長、若田光一理事と共に衛星放出の瞬間を見守った。きぼうの超小型衛星放出機構「J-SSOD」の操作経験を持つ油井亀美也宇宙飛行士が衛星放出までの解説役を務め、日本時間19時30分から連続して3機の衛星が放出されると、関係者から拍手が沸き起こった。
 

見守るコスタリカ、ケニア、トルコの大使ら来賓に衛星放出を解説する油井亀美也宇宙飛行士。
 

衛星放出成功に沸き立つ3カ国の関係者と山川宏JAXA理事長
 
最初に放出されたコスタリカの「Irazu」は、コスタリカ共和国初の人工衛星。コスタリカ工科大学が開発し、九州工業大学が環境試験で協力した。中米地域の熱帯雨林で天候や土壌、樹木のデータを地上のセンサーが収集し、人工衛星が上空を飛行しながらデータを集めるストア・アンド・フォワード技術の実証を目指す。コスタリカのラウラ・マリア・エスキベル・モラ特命全権大使は、「コスタリカと中央アメリカ初の人工衛星」と述べ、衛星技術の活用に期待を示した。
 

コスタリカ初の人工衛星「Irazu」
 
2番めに放出されたケニアの「1KUNS-PF」はケニア共和国初の人工衛星。2015年に始まったJAXAと国連宇宙部(UNOOSA)との連携協力の元、きぼうからの衛星放出プログラム「第1回KiboCUBE」プログラムに選定された。ナイロビ大学が開発、運用する1Uサイズ(10センチ立方)の超小型衛星だ。将来の地球観測衛星の技術につなげることを目標としており、放出を見守ったケニアのアミナ・C・モハメド教育省長官は「2機目、3機目と開発を続け、より精度の高い情報を得られるようになると期待している」と語った。
 

ケニア初の人工衛星「1KUNS-PF」
 
3番目、トルコ共和国の「UBAKUSAT」は、イスタンブール工科大学の開発による3U(10×10×30センチ)サイズのキューブサット。トルコでは5機目の人工衛星となり、VHF/UHF帯の通信技術実証を目的としている。ハーカン・オズデミル公使参事官は「音声通信分野に活用できる基礎技術を目指す」と語った。
 

トルコの通信技術実証衛星「UBAKUSAT」
 

左からトルコのハーカン・オズデミル公使参事官、コスタリカのラウラ・マリア・エスキベル・モラ特命全権大使、ケニアのアミナ・C・モハメド教育省長官、山川宏JAXA理事長、文部科学省の佐伯浩治研究開発局長、国連宇宙部の小島彩美有人宇宙技術イニシアチブエキスパート。
 
JAXAはこれまで、日本国内の大学から募集した超小型衛星を「きぼう」から放出してきたほか、2015年から2018年まで3年間の国連宇宙部との連携協力プログラムにより、年間1回程度の途上国からの衛星放出機会を提供してきた。2018年度中にグアテマラ共和国のキューブサットを放出する予定だ。
 
2012年に運用を開始して以来、J-SSODを利用した衛星放出は25機となっている。しかし、同じ「きぼう」を利用する米NanoRacks社開発による超小型衛星放出機構の利用は、それを上回る180機となっている。JAXAは今後、衛星放出機構の能力を向上させ、2019年にはキューブサット24U相当(10センチ角のキューブサット24機分)、2020年には48U相当(同じく10センチ角の衛星48機分)に拡大する予定だ。2020年までに、年間100Uに相当する衛星放出を目指すという。
 
最小で10センチ角、1.3キログラムというサイズの「キューブサット」は2003年に東京大学・東京工業大学のチームが初めて打ち上げに成功して以来、人工衛星の研究開発手法として定着した。大学や宇宙機関での利用が進み、新興国が初めて人工衛星を開発、利用するモデルともなっている。
 
また、地球低軌道での技術実証だけでなく、深宇宙での活用も進んでいる。今年5月5日に打ち上げられたNASAの火星探査機「InSight」には、ジェット推進研究所が開発した「Mars Cube One(MarCO)」と呼ばれる2機の6Uキューブサットが相乗りし、通信や航法機能の実証を行う。さらにNASAの大型ロケットSLSの初号機には、東京大学の「EQUULEUS」と「OMOTENASHI」の2機が搭載され、月フライバイなど新宇宙探査の技
術実証を行う予定だ。他にも、NASA、ESAを初め多数の研究機関が多様なキューブサットでの宇宙探査を計画しており、地球低軌道での技術実証といった用途もさらに拡大すると考えられる。
 
NanoRacks社の場合、超小型衛星を開発する研究機関や事業者に打ち上げ機会を提供するSpaceflight社とのパートナーシップを結び、打ち上げ需要を取り込んでいる。JAXAも国内外の需要を積極的に取り込むため、大学とのパートナーシップや国連宇宙部との連携を進める予定だ。さらに、「きぼう」からの衛星放出枠を民間事業者に開放し、2018年5月末には選定事業者を公表するという。キューブサットを活用する海外の旺盛な需要を取り込み、かつSpaceflight社のような衛星の打ち上げ機会コーディネーターというビジネス育成につながることが期待される。
 

「きぼう」のエアロックスライドテーブルへの衛星取り付け作業
 
Image Credit: JAXA、秋山文野
■JAXAと国連宇宙部との連携協力(KiboCUBE)に基づく第1回選定のナイロビ大学衛星の「きぼう」からの放出について
http://www.jaxa.jp/press/2018/05/20180511_1kuns-pf_j.html
(文/秋山文野)

秋山 文野

IT実用書から宇宙開発へ分野を移してはたらく編集/ライター。各国宇宙機関のレポートを読み込むのが日課。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、書籍『図解ビジネス情報源 入門から業界動向までひと目でわかる 宇宙ビジネス』(共著)など。宇宙エレベーター協会会員。

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