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木星の衛星「エウロパ」では、氷の地殻の下に大量の液体の水(海)が存在すると考えられています。今回、地上の望遠鏡を使った観測によって、エウロパから噴出した水(水蒸気)を直接捉えたとする研究成果が発表されました。

木星の衛星「エウロパ」(Credit: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute)

■合計17日の観測でたった1回ながらも水蒸気の噴出を確認

ガリレオ・ガリレイが発見した木星の4つの衛星の1つとして知られるエウロパは、地下の海に生命が息づいている可能性が指摘されており、土星の衛星「エンケラドゥス」などと並んで地球外生命探査の候補地として注目を集めている天体です。

NASAのLucas Paganini氏らは、ハワイのW.M.ケック天文台にある「ケック望遠鏡」を使い、エウロパから噴出する水蒸気の観測を試みました。2016年2月から翌2017年5月までの間に合計17日実施された観測のうちたった1日だけ、2016年4月26日に行われた観測において、エウロパから噴出した水蒸気の水分子が発した赤外線を、初めて直接捉えることに成功しました。

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エウロパから噴出する水蒸気の想像図(Credit: NASA/ESA/K. Retherford/SWRI)

 

このときエウロパから噴出した水の量は毎秒2トンほど、合計で1500~2700トンほどに上る見積もられています。いっぽう、残る16日分の観測では水の噴出を確認できなかったことから、研究チームは、エウロパでは水が噴出する頻度が少ないか、あるいは一度に噴出する量が少ないために地球からでは検出できていない可能性があるとしています。

なお、ケック望遠鏡は地上にあるため、観測においては地球の大気に含まれる水分子も考慮しなければなりません。研究チームは地球大気のシミュレーションモデルを利用することで、ケック望遠鏡の近赤外線分光器「NIRSPEC」で得られたデータからエウロパと地球の水を区別することに成功しています。

■最終的には探査機による直接確認が必要

エウロパから水(水蒸気)が噴出している可能性は、過去の研究においてすでに指摘されていました。エウロパから噴出した物質のなかに水素と酸素が存在することも「ハッブル」宇宙望遠鏡の観測データから判明していましたが、噴出した水蒸気そのものを捉えることに成功したのは今回の研究が初となります。

水蒸気の噴出が確認されたということは、エウロパの地下に海が存在する可能性がさらに高まったことを意味します。その水の量は地球の海水の2倍に達するとも考えられていますが、本当に海が存在するのか、噴出物にはほかにどのような物質が含まれているのかといった疑問の答えを得るには、やはり直接探査機を送り込まなければなりません。

NASAでは現在、エウロパの探査を目的とした探査機「エウロパ・クリッパー」の設計を進めています。エウロパ・クリッパーは木星を周回しつつ、エウロパに数十回接近してその表面や地下の様子を詳しく観測したり、噴出した固体物質の組成を調べたりすることが計画されています。エウロパ・クリッパーは2020年代半ばにも打ち上げられる予定です。

エウロパを接近観測する「エウロパ・クリッパー」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

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Image: NASA/JPL
Source: NASA - keckobservatory
文/松村武宏

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