NEC、独自の衛星管制センターを公開 衛星利用ビジネスへ意欲

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日本電気(NEC)は2018年1月10日、近く打ち上げ予定の地球観測衛星「ASNARO-2」を管制する「NEC衛星オペレーションセンター」を公開した。

日本初、衛星メーカーのオペレーションセンター誕生

NEC衛星オペレーションセンター(以下、オペレーションセンター)は都内にあるが、正確な場所は非公開。従来、日本国内には衛星を運用するJAXAやスカパーJSATなどの施設はあるものの、NECのように衛星メーカーが自らオペレーションセンターを設けるのは初めてとのことだ。

オペレーションセンターに並ぶスクリーンやコンソールの画面をよく見ると、全てWebブラウザ。運用機能は別の場所にあるサーバが担っており、オペレーションセンターは画像表示や入出力のみを行う、いわゆる「シンクライアント」の構成だ。別のNEC事業所内にもバックアップのオペレーションセンターが設けられ、災害時などにも運用を継続する。

管理者1名とオペレーター10名の合計11名分の端末が並ぶが、通常の運用は数名程度で、交代時の引継ぎや予備を考慮して多めに用意された。大型スクリーンに表示された画像のうち、左端は撮影要求の入力画面。地図アプリをよく似た画面上で撮影したい地点や範囲を指定すると、衛星がその場所を撮影計画が自動的に作成される。左中の画面は衛星の場所や撮影のための姿勢変更などを見せるCG映像。

中右の画面は運用計画を時間軸で並べたスケジュール表、右端は衛星の状態などを表示する画面だ。このように、右側の2画面は従来の衛星と同じで専門的な知識がないと理解できない一方、左側の2画面は直感的でわかりやすい。衛星を様々なユーザーに利用してもらうために、わかりやすさを志向した画面になっている。またオペレーションセンターの内装デザイン自体、高級感もある装飾がされており(撮影を許可された範囲が限られたのが残念だ)、実用本位の従来の施設とは異なるビジネスでのイメージ演出の狙いが見える。

ASNARO2は1月17日にJAXAのイプシロンロケット3号機で打ち上げ予定で、衛星開発部門での機能確認などの後、オペレーションセンターでの運用が開始される予定だ。

衛星製造からデータ利用まで「垂直統合」

NECナショナルセキュリティ・ソリューション事業部の永野博之事業部長が、このオペレーションセンターとNECの宇宙利用サービスの展開について説明した。

NECは日本初の人工衛星「おおすみ」以来約50年、政府の人工衛星の研究開発に携わってきた。そして宇宙開発はこれまでの研究開発から、宇宙を利用し産業化する時代に移っている。そこでNECは衛星の製造だけでなく、運用や利用もビジネスとして展開するための事業会社「日本地球観測衛星サービス(JEOSS)」を設立、衛星の開発から利用まで一貫した「垂直統合型」のサービスを目指すという。

そして今回公開した衛星オペレーションセンターと、その管制システム「GroundNEXTAR」を合わせた衛星サービス事業で、今後3年間で50億円の売上を目指すという。これにはASNARO-2の開発費は含まれず、画像を利用するユーザーへのシステム販売や、画像そのものの販売だけの金額だ。現在のところ、中東の石油企業から海洋汚染監視の引き合いが来ており、ASNARO-2の運用開始後に契約を進めたい考えだという。

また独自の衛星を購入したい新興国などには、衛星製造から運用までのパッケージ販売も行う。ASNARO-2と同等の衛星を製造する場合、従来の地球観測衛星の半額~1/4の価格に抑えられるとした。

ライバルにもラブコール、宇宙利用の産業化へ

一方で、永野事業部長は「この事業はNECだけではなく、日本の宇宙利用産業に貢献したい」と話す。GroundNEXTARはNECのASNARO-2だけでなく、他社製衛星とも組み合わせられるパッケージシステムとして開発している。

日本で数多くの衛星を開発してきた2大メーカーと言えば、NECと三菱電機。「三菱電機とは衛星の入札では競争関係にあるが、利用サービスでの協力はウェルカムだ。もし他社製衛星の方が安ければ、我々は喜んで利用する。そうなったらNECも、衛星をコストダウンするだろう」と言明。宇宙利用ビジネスの成功のためには、三菱電機製衛星の選択すら否定しない方針を示した。

ASNARO-2の設計寿命は5年で、ビジネスの継続のためには3年後頃には後継衛星の準備を始めなければならない。また、レーダー衛星のASNARO-2に加えて、光学衛星のASNARO-3も検討されている(既存のASNARO-1は経産省所有の衛星で、NECの所有ではない)。永野事業部長は「この3年間でしっかり利益を出し、次へつなげたい」と語った。

大貫 剛

東京都庁に技術職職員として11年間勤務後、民間宇宙開発を志して退職。ベンチャーを経て、宇宙開発や前職の経験を生かして公共事業に関する解説などの、情報発信をしている。宇宙作家クラブ会員。

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