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宇宙を目指すプエルトリコ
ナショナル・スペース・ソサエティ(NSS)が主催する国際宇宙開発カンファレンス(ISDC)、35回目の今年はカリブ海の島、プエルトリコで開催された。NSSは人類の宇宙への活動領域拡大や宇宙資源利用を目指し、政府や民間の宇宙活動をグラスルーツで盛り立てている組織、ISDCは毎年5月に米国各地(2015年は例外的にトロント)で開催される1000人規模のカンファレンスである。中高生プログラムも充実、インドをはじめ多くの学生が参加している。

今年の開催地となったアメリカ自治領プエルトリコは観光業のイメージが強いが、実は産業の約半分は製造業。税制の優遇措置などの政策で経済開発を推進、IT、バイオ、製薬などに加え航空防衛産業の誘致を行っており、航空・防衛・宇宙クラスターの結束も堅い。

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宇宙コキ(コキ蛙はプエルトリコ原産)  ©NSS

月COTSで火星へ
NASAエイムズからは、月COTS((Lunar Commercial Orbital Transfer Service)で火星を目指す発表。COTSは国際宇宙ステーションの貨物便を民間からのサービスとして調達する商業軌道輸送サービス(Commercial Orbital Transportation Service)。PPP(官民連携)のもと宇宙ベンチャーを含む民間に門戸を開き競争原理を取り入れた商業宇宙開発の代表名詞になっている。シリコンバレーの投資顧問がNASAに導入、NASAは民間の1顧客としてサービスを購入するというパラダイムシフトに繋がった。シスルナ(月近傍)や月面開発でもこの方法を取り入れて、民間のサービスで、国際協力のもと月の資源を利用して、まずは月を開発、最終的には火星を目指す。NASA本部でも昨年7月に、従来見積もりの10%の予算で10年以内に実現する月面開発Evolvable Lunar Architecture (ELA)を発表、民間企業の競争原理を取り入れた官民連携で進める提案を行っている。

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今年4月、NASAエイムズとスペースXは、2018年に打ち上げる無人のレッドドラゴンの火星着陸ミッションで火星EDL(火星大気圏突入・降下・着陸)のデータシェアを行うことを発表した。

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Evolvable Lunar Architecture (ELA) ©NASA

マーズワンの今
2012年にオランダに設立された火星片道飛行のマーズワン。2013年のISDCでは、設立者のバス・ランスドルプが基調講演を行った。世界140か国以上から20万人を超える応募者を獲得、その後2回の選定で現在100人になっている。

今年のISDCでは、コスチュームデザイナーでもあるという候補者が火星ファッションで登壇した。2017年までに24人のクルー選定が終了、2020年に火星着陸機、2022年にローバー、2024年に貨物船と2つの居住モジュール、2025年にローバー・貨物船・生命維持システムを打ち上げ、2026年に最初の4人の火星飛行がスタートする予定だという。火星飛行に備えて、人体への影響、環境、技術、地質学など火星移住のための調査、また教育分野におけるインパクトを研究している。家族に対しての説得がとても重要で難しいと答えていたのが印象的だった。

ISDC後、チームで乗り越える5日間のサバイバル選抜試験で40人に絞られることが公表された。最終的にはそのうちの24人が、2026年に開始予定の火星への片道飛行に選抜され、2年ごと4人ずつ出発するというが、バイタリティ溢れる彼女は24人のクルーに選定されるような気がした。


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マーズワン ©MarsOne

スペースポート誘致
もともとプエルトリコは、直径約300mの世界最大の電波天文鏡があるアレシボ天文台で有名である。

(この秋、中国に直径500mの電波天文鏡Fastが完成すれば世界最大を譲ることになる。)近年、税制優遇策を利用して宇宙産業を取り込む政策で企業誘致を推進、2014年にプエルトリコで第1回カリビアン宇宙サミットが開催され、地元の宇宙産業誘致の体制は強化されてきた。

それとともに推進されているのが商業スペースポート計画。運営組織が設立され、東側にある既存の海軍飛行場を活用する事業プランで、米連邦航空局(FAA)に認可を申請するところである。米国にはすでに成立している商業スペースポートが10か所あり、さらにこの秋にも認可される予定のコロラド州の他、ハワイ州やジョージア州など数か所が申請段階にある。プエルトリコも活発な誘致活動を展開、眼下にカリブの島々を見渡すことができる宇宙旅行の実現を目指している。

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スペースポート計画が進むルーズベルト・ロード ©Spaceport Puerto Rico

コミコン
ISDCと同期間、隣接するコンベンションセンターで開催されていたコミコン、朝は入場に長い列ができていた。参加者はISDCの100倍以上…!

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